個人事業主の法人化とは|メリット・デメリットを解説
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個人事業主が事業を拡大する際に考慮すべきステップの1つが「法人化」です。
法人化には、節税効果や信用力向上など多くのメリットがある一方で、設立費用やコストの増加といったデメリットも存在します。
本記事では、個人事業主が法人化することで得られる主なメリットと考慮すべきデメリットを解説します。
個人事業主の法人化とは
個人事業主の法人化とは、個人事業主が法人を設立し、その法人が権利や義務を引き継いで事業を営むことを言います。
自身のビジネスが一定の規模に達したため法人化する場合が多く、これを「法人成り」と呼ぶこともあります。
法人化にはさまざまなメリットがある一方で、考慮すべきデメリットも存在します。
次から詳しく見ていきましょう。
法人化するメリット
法人化するメリットとして、大きく分けて以下の3つがあります。
- 税制面での優遇
- 社会的信用度の向上
- 責任範囲の限定
1.税制面での優遇
個人事業主を法人化した場合に得られるメリットの1つとして、さまざまな税制面での優遇が挙げられます。
まず、個人事業主と法人とでは課税される税金の仕組みが異なります。
個人事業主は所得税が適用されるのに対し、法人は法人税が適用されます。
個人事業主に課税される所得税は累進課税と言い、所得の増加と共に税率が上がる仕組みで、最大45%になります。
一方、法人税は比例税率が適用され、中小法人の場合は所得金額800万円までは15%、超える金額については23%程度となっています。
また、法人化することにより、経費として認められる範囲が広がることも特徴です。
法人にのみ経費として損金算入(法人税法上、所得から控除できる費用を含めること)が認められているものとして、社長や家族従業員の退職金、出張手当、慶弔金などがあります。
経費として損金に算入できるものが増えると、結果として課税所得を減らすことができ、節税に繋がります。
2.社会的信用度の向上
法人を設立しようとした場合、定款を作成して承認を受けた後、商号や住所、資本金などの情報と共に法務局へ届け出る必要があります。
これを登記と言いますが、登記した情報は誰でも閲覧できるため法人としての責任が発生し、社会的信用度の向上に繋がります。
また、法人は会社法などの法律に基づいて運営されるので、個人事業主より社会的信用度が高いとも言えるでしょう。
社会的信用度が向上するということは、金融機関や取引先からの信用が向上し、資金調達や取引規模の拡大へと繋がることを意味しています。
3.責任範囲の限定
個人事業主と法人(ただし、株式会社や合同会社などに限る)とでは、会社が倒産したときなどに負う責任の範囲が異なります。
個人事業主は、事業における責任すべてを事業主である個人が負い、借金したり個人の資産を持ち出したりした場合でも負債を返済しなければなりません。
無限に責任を負うという意味で、これを「無限責任」と言います。
一方、出資額を超えて責任を負わないことを「有限責任」と言い、株式会社や合同会社などの場合は代表者個人がすべての責任を負う必要はありません。
法人として有限責任になることで出資額を超える支払い義務は発生せず、個人の資産は守られます。
法人化のデメリット
次に、個人事業主が法人化した際のデメリットについてご紹介します。
法人化する上でのデメリットとして、大きく分けて以下の3点が考えられます。
- 設立費用がかかる
- 社会保険のコスト増加
- 赤字でも税金がかかる
1.設立費用がかかる
法人を設立するには、さまざまな費用がかかります。
大きく分けて以下の3つの費用がかかると考えておくと良いでしょう。
・法定費用
・資本金
・その他
法定費用とは、公証役場や法務局といった役所に支払う費用のことで、定款の認証費用や登録免許税などがあります。
資本金は1円であっても会社設立は可能ですが、少ないと事務所を借りる際の契約料や備品を購入する際の資金が足りなくなる恐れがあるので、最低でも初期費用と運転資金3か月分を足した金額程度は準備しておくと安心でしょう。
その他にも、実印の作成費用や印鑑証明書代、登記事項証明書の発行代などがかかる場合があります。
2.社会保険のコスト増加
個人事業主の場合には国民健康保険に加入しますが、法人は原則として社会保険への加入が義務付けられています。
法人は社会保険料の半分を負担しなければならず、手続きなどの事務負担も増えることになります。
3.赤字でも税金がかかる
個人事業主では所得に所得税がかかるのと同じように、法人の所得には法人税がかかります。
法人に課される税金には、大きく分けて以下の3つがあります。
・法人税、地方法人税
・法人住民税
・法人事業税
個人事業主の場合、決算で赤字になると所得税と住民税は免除となります。
法人の場合も、赤字であれば法人税、地方法人税、法人事業税は免除となります。
しかし、法人住民税については、赤字であっても一部を納付する必要があります。
法人住民税は法人税割と均等割の2つに分かれており、法人税割は法人税額をもとに算出するため、赤字であれば税額は0円ですが、均等割は資本金額や従業員数によって金額が決められており、赤字であっても納付しなければならないのです。
まとめ
個人事業主が法人化を検討する際は、事業の成長や税制面でのメリットだけでなく、デメリットや手続きの複雑さも十分考慮することが重要です。
法人化が自社のビジネスに適しているかを冷静に判断し、必要な場合は専門家のサポートを受けることを検討してみてはいかがでしょうか。